ロボットについて

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「心臓の部分のディスクが古くなって緩んでいるのが異音の原因らしいです」 「君には私の爺さんの頃から世話になっているからなあ。胸にディスクという部品が入っていて、それが壊れそうなのか?」 「はい。ディスクというのは円盤状の部品でございます。円の中心を支点に円盤が回転して、円盤に刻まれたプログラムが絶えず私の全身から送られるデータとやりとりを行い、身体を動かす指令を出しているそうです。異音は、そのディスクの溝が深くなりすぎて」  キャシーが細かく説明をしようとしてくれたが、私は手を振ってそれを止めた。仕組みを聞いたところで私には理解できそうにないし、興味もない。 「つまりそのディスクを交換すればいいんだろう?」 「はい。そうすれば異音も直ります。ですが…」  キャシーは眉根を寄せて言いにくそうに話を続ける。私はさっさとこの問題を解決して美味しい紅茶を淹れてもらいたかった。 「可能であれば、私の心臓のディスクが壊れて止まるまでこのままにしていただけないでしょうか?」 「それはどういうことだ?」 「私が不意に壊れてしまうまで、このままにしてほしいのです。壊れた後、私は廃棄物になりますので旦那様のお手間になってしまうと思いますが」 「待ってくれ、心臓のディスクを入れ替えればすぐに君は元の通りに動くというのに、わざわざその手間を惜しんで私に後始末を頼んでいるのか?」  私の頭にキャシーが壊れた後のことが思い浮かぶ。キャシーが突然動かなくなってしまって、おろおろしながら廃棄物処理場に電話して、キャシーを一苦労しながら玄関まで運んで、さらに新しいロボットがやってくるまで掃除から食事から身の回りのことをして…、考えるだけでげんなりする。
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