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再びキャシーが出かけ戻って来た時、ちょうど私はキャシーが淹れた美味しい紅茶を飲み終えた頃だった。
「ただいま戻りました」
「お帰り、キャシー。具合はどうだ?」
「直りましたよ、旦那様」
キャシーはいつもと変わらぬ笑顔を私に向ける。しかし、いつもなら話を続けるのが下手な私に気遣って一言二言会話を続けてくれるのだが、今日はそれが無かった。微妙な会話の間に居心地悪さを覚えながら、私が会話を続ける。
「そうか…なら良かった。すまないがお茶のお代わりを淹れてくれないか?」
「はい。只今淹れてきますね」
キャシーは台所に引っ込んだ。そういえば、最近キャシーに頼り過ぎだったのではと私は反省し始めた。
少し待てば、キャシーが温かい紅茶をティーワゴンに乗せて私の前までやってくる。
「どうぞ」
「ありがとう。今は特に用事は無いから好きに過ごしてくれ」
「わかりました。何かあればいつでも呼んでくださいね」
そう言ってキャシーは私の部屋から退出した。少しして、私は紅茶を口に含んだところで眉を顰めた。いつもよりわずかに薄い。私が好まない市販の紅茶と同じ薄さだ。これは一言文句を言おうと私は立ち上がってキャシーを探す。
キャシーはテレビがある広間に居た。
「あはは!」
彼女は、キャシーが見もしなかったバラエティ番組を見て笑っている。それを見て彼女が心臓のディスクを取られることを嫌がっていた理由が、ようやくわかった。
キャシーはもう居ない。彼女の感性を持ったロボットはもう居なくなってしまった。
私は喪失感と罪悪感のあまり、意味不明な叫び声をあげ、玄関に置いてあった傘でキャシーが一切動かなくなるまで殴り倒した後、家から飛び出した。
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