兎のサギ

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「さ…………ぎ…………おね、がい…………にげ……て…………」  少女の胸には矢が刺さっていた。サギはすぐに猟師のものだと気づいた。  この森には猟師がよく来る。サギもまた狙われる対象だった。腕が悪かったのだろう、走るサギに照準を合わせて射ったせいで少女に当たった。そして人間に当ててしまったことが恐ろしくなったのか、気づいていないのか、弓の持ち主は現れない。  サギは少女に駆け寄った。痛みが少しでも減るように、頬を舐めた。 「ありがと……サギ…………」  少女はくすぐったそうに、幸せそうな顔をしてそのまま動かなくなった。  サギは三日三晩、その場から動かなかった。森に住む精霊ニンフが声をかけてくれなければ、少女の後を追うところだった。  ニンフはサギに木の実と水と休息を与えると、少しばかりの金貨を腰につけてくれた。 「この森を抜けた先に町があるわ。そこでは魔法使いが住んでいるの。もしかしたらあの女の子を救う方法をくれるかもしれない」  サギはニンフの言葉を信じて、町に向かった。少女の体を森に残して。  一人目の魔法使いはサギの金貨に目が眩んで襲いかかってきた。サギは心臓が痛くなるくらいの勢いで逃げた。二人目は気のいい魔法使いに見えたが、少女を見ると燃やそうとした。サギは噛みついて撃退し、もう一度町へ行った。  リアの森で眠る少女の体はすでに骨が見え、肉が腐り落ちていた。サギも鼻を押さえたくなるほどの臭いをさせていた。とうとう、森に住む動物たちは少女とサギに姿を見せなくなった。  けれど、サギは構わなかった。ただ少女ともう一度会う方法があるのなら。優しい少女に抱き締めてもらえるのなら。  臭いで鼻が曲がってしまうことや森の動物たちから避けられることくらい、どうってことないはずだ。   
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