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サギが目を覚ますと、赤毛の男がのぞき込んでいた。サギは跳ね起きると、自身がカウンターに寝ていたことに気づいた。しかも羽毛が敷き詰められた柔らかいクッション上で寝かされていた。
「お客様が倒れましたので、恐縮ながらカウンターにクッションとタオルを用意して寝かせました。四半刻も経っていませんよ」
「気分はどうです?」と尋ねながら、男は水の入った木の器を差し出す。サギはフイッと顔を逸らした。警戒してしまう。
「大丈夫ですよ、お客様。私はあなたを無下に扱ったりしません」
サギは赤い瞳で睨んだが、男に敵意がない。この男ならあの少女を助けてくれるだろうか。サギは腰のポシェットから金貨を取り出した。両手いっぱいに。
「叶えて欲しい願い事があるのですね? いいでしょう、その金貨に見合うものを売って差し上げます。あなたの願いを教えて下さい」
サギは考えた。少女を助けたい。もう一度会いたい。男の翡翠色の瞳をまっすぐ見つめた。男は肩をすくめて笑った。
「……まあ、私は動物の言葉がわからないのですが」
サギはキュイキュイ鳴いた。じゃあどうやって願い事を叶えるんだ! と抗議をして。男は兎の様子を見ると、カウンターを回って店内の薬棚に移動した。
「事情はなんとなくわかっています。大切な友達が新しい命を得るまで待つことはできますよ。あなたが死ぬことなく、ね」
男は白い布のかかったテーブルから二つの指輪を取った。
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