優くんなんてっ!!……大好き、なんだから。

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 落ち着いたプレーで確実に点差を広げていく青山さんに対し、優くんの焦りは募っていく一方だった。きっと、普段なら取れるシャトルが拾えていない。キレのあるヘアピンが出来てなくてふわっと上がり、そこをついてスマッシュを決められる……  青山さんがマッチポイントを先取した。点差は15点。  お願い……どうか、このまま終わらせないで!  じりじりと締め付けられる胸の痛みを抱えつつ、試合を見つめる。周りの景色から切り取られたように、優くんの立つコートしか、目に入らない。  青山さんの高く大きいクリアに優くんが追いつき、力強いジャンピングスマッシュを決める。素早く打ち返され、再度鋭いスマッシュを打ち込む。今度は青山さんがふっと力を抜き、クロスした角度からのヘアピンを決めた。まるで這い上がるかのようにシャトルがネットを越え、ネットに触れながらぎりぎりで優くんのコートにポトリと落ちた。  優くんが、がっくりと膝を落とす。  試合終了の笛が鳴った。  試合は基本3ゲームマッチだけれど2ゲーム先取した方が勝ちとなるので、青山さんの優勝が確定した。  優くん……  試合を終えて青山さんと握手を交わし、審判と線審に頭を下げた優くんを見ていたら、耐えきれず立ち上がった。  「私……優くんに、会ってきます」
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