春画絵師の神様

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「一度きりの人生なんだからさ。妥協せずに自分の胸に手を当てて心の声を聴いてみたら?」 鉄也は爽やかな笑顔で目元を少し細めてウインクしてきた。 「うん。いつも応援してくれてありがとう。鉄也はどうするの?」 美晴はキャンパスのオープンカフェで白い丸椅子に座りカフェラッテを口にした。 二人は新緑の中で、あと1年も残されていない大学生活を名残り惜しそうに満喫していた。 美大は金がかかる。 特に私学は。 親にいつまでも迷惑をかけてはいられない。 本当に申し訳ない気持ちもあった。 早く就職しろと思われているのは言われなくてもよく解っていた。 いつまでもこのキャンパスライフがある筈がないのだ。
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