春画絵師の神様

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「そうだな。僕は普通にどっかの会社に就職するよ。そして絵はさ、いつでもまた描けるしね。いったん休憩かな。夢を追いかけて生きるのもカッコイイと思うけど僕には、それ程の情熱も根性もないからさ」 鉄也の意外な回答に少し驚いた美晴だった。 「そうよね。食べていかなきゃいけないもんね。まずは就職よね」 カフェラッテの甘さが解らなくなる程、美晴は少し動揺していた。 鉄也は油絵のコースだった。 大胆なタッチで特に人物画が素晴らしかった。 それにカンバスに向かう姿がとてもゾクゾクする程素敵だったのだ。 絵の具まみれになりながら無心で何時間も作品と格闘する姿が一番好きだったからだ。 まるで何かが乗り移ったような眼差しで人を寄せ付けないような殺気も醸し出していた。 今ここで笑顔を見せている鉄也は、ただの学生にしか過ぎなかった。
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