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「最後に質問」
「なに?」
「俺のこと好き?」
「……好き」
良かった、と哲哉は微笑んだ。
*
哲哉の親は、言葉には出さないが難色を示した。しかし哲哉は強引に説き伏せた。
「あんたたちがそんななら、もし子どもができても会わせねぇぞ」
と、ほとんど脅しだ。ご両親も心配してくれてるんだから、と麗奈がフォローに回る始末である。お前どっちの味方なんだと哲哉に呆れられ、できたお嬢さんねとご両親からはなぜか株が上がった。哲哉は「作戦通りだ」と胸を張ったが、ただの結果オーライだろそれ。
新居はペット可物件を選んだ。次の休みに猫の保護団体が主催する譲渡会に行ってみる予定だ。
動画サイトで見つけたルンバ猫に憧れたと言って、哲哉が一言もなしに勝手にルンバを買ってきた。いくらしたのと聞くと口笛を吹きながらトイレに逃げていったので、後で膝を詰めてお説教である。
三十代に入ると妊娠確率がますます下がるらしいので早めにとは考えているが、こればかりは授かりものだ。二人で相談して、もし子どもができなくても不妊治療はしないことにした。
「本当にいいの?」
「いい。子どもがいてもいなくても、麗奈と一緒にいるのが俺の幸せだから」
幸せは人と比べても仕方がない。二人の幸せの形を築いていくつもりだ。
二人で、末永く一緒に。
Fin.
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