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お土産屋さんで見つけた、猫のイラストの緑茶ティーバッグパッケージ。飛びついたのは麗奈だった。
「うわー! てっちゃん見てこれカッワイイー!」
他の土産物はというと地元の海産物を使った干物なんかがメインで、手にぶら下げて飛行機の距離を帰るには少し気が引ける。その点、お茶なら鞄の隙間に収まる程度のものだ。
「島のお茶なんですか?」
麗奈が尋ねると店員さんは苦笑した。
「島でとれたわけではないんですが、新宮町のお茶ですよ」
福岡県糟屋郡新宮町相島。新宮町本土の新宮漁港からフェリーで二十分弱の島である。
相島産ではないものの同じ新宮町産ということで麗奈は納得したらしく、件のお茶と、ついでに猫のポストカードをお買い上げとなった。
夕方の飛行機で羽田に飛び、埼玉にある哲哉の自宅に帰り着いた時には夜九時を回っていた。麗奈も二駅離れたアパートで独り暮らしをしているが、当たり前のように哲哉の部屋に転がり込む。哲哉はお風呂の準備。麗奈はキャリーバッグから汚れ物袋を引っ張り出すと手際よく洗濯機を回し始めた。
お風呂上りに早速麗奈がお茶を淹れてくれた。二人顔をくっつけるようにしてスマホで撮った数々の写真を眺めながら、旅の思い出に花を咲かせる。
一日目は太宰府天満宮に行った。梅ヶ枝餅がすごくおいしくて、参拝の行き帰りで二回食べた。
今回の旅のメインは二日目である。
宿泊先の天神のホテルから地下鉄で貝塚駅へ。西鉄貝塚線に乗り換え、西鉄新宮駅で降りた。新宮漁港まではコミュニティバスが通っているが、麗奈の希望で徒歩になった。曰く、せっかく来たんだからその土地を歩いて実感したいということだった。思ったより遠かったのと真夏の日差しが殺人的だったのとで間もなく後悔したことは言うまでもない。
哲哉は画像フォルダをめくった。
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