君と一緒に猫を飼いたい

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 哲哉の見立ては「末永く一緒に」だ。付き合う前、あるいは付き合って間もない時期は、かわいくて頭が良くて気立てがいい麗奈のことがただ好きなだけだった。  今はどうだ。「これが愛しているという感情なのか――」などとがらにもなくたそがれるくらいにはベタ惚れ状態である。  麗奈も俺と同じ気持ちに違いないと信じて疑わなかった。 「末永く一緒に」と。 *  一度爆発した麗奈は、以降はだいぶ落ち着いた様子だ。 「私、てっちゃんのこと好きじゃないみたい」  頭をガツンと殴られた気分だった。 「てっちゃんと付き合うまでは男性経験なかったからさ、告白されて彼氏ってどんな感じなんだろうってOKしたの」  最初はそんなもんだろう。相思相愛で付き合うほうが珍しい。 「告白されたのも初めてだったからびっくりしたよ。新手の詐欺かと思ったもん」  麗奈はふふっと笑った。 「てっちゃんと一緒にいた三年間、すごく楽しかったよ。愚痴も黙って聞いてくれたね。いっぱい旅行も行ったね。ありがとう」  ありがとうとか言うな。本当に終わりみたいじゃないか。俺はまだ麗奈のことを、 「でも、このままおばあちゃんになるまでてっちゃんと一緒にいるんだろうなぁって考え始めた時ね、気づいちゃったの。仲が良くて楽しいのと、好きだとか愛するだとかって、違うんだよね」  麗奈は淡々と言葉を繋ぐ。 「俺は違わなかった。一緒にいて楽しくて、仕事がつらくても麗奈と会えばそんなの吹っ飛んで、好きで、愛している」 「私にとっては違ったの」  取り付く島もないとはこのことだ。  でもまだ。  今日だって一緒に旅行に行ったばかりだ。楽しかったのは俺だけか。麗奈は好きじゃない俺と仕方なく一緒にいたのか。そんなわけあるか! 「私たち、二十六でしょう? 結婚して三十くらいまでに子ども……とか考えたら、もう最後のチャンスかなって思うの」  麗奈は、俺と結婚することなんか考えちゃいなかった。俺だけだ、愛していたのは。末永くとか甘っちょろい未来を空想していたのは。 「麗奈……」  もう名前を呼ぶことしかできなかった。すがる気持ちと、諦めも混じっていた。 「お願い、てっちゃん。わかって……?」
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