君と一緒に猫を飼いたい

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 私のせいで君が不幸になるのが嫌だ。  相島旅行の動画で子どもが映った時、全身がこわばった。止めろと叫びそうだった。そしてそんな自分に戦慄した。私は子どもを見ることが怖いと感じる女になっている。嫌な女に片足突っ込みかけている。  哲哉も結婚を考えていてくれたことを知って嬉しかった。しかし哲哉の口から何気なく発せられた結婚というワードが、私にその資格がないことを容赦なく暴き立てた。  子どもができないかもしれないので別れてください、とは言えなかった。俺が子ども好きだから気に病んで……と哲哉の心が悲惨なことになるのは火を見るより明らかだ。  しかし、嘘をついてあんな振り方をしたのが正しかったのかは、今となってはわからない。 *  麗奈は枕に顔を押し付け、布団を頭までかぶってぐずぐずとしていた。 「末永く一緒に……いたかったな。」 「なんだ、お前もか」  弾かれたように振り返った。 「どうして……」  息を切らした哲哉が寝室の前にいた。膝が笑っている。どれだけ走ってきたのか――。遅れて、玄関扉の閉まる音がした。 「朝起きたらお前がいなかった。まだ暗いのに一人で帰る奴があるか、危ないだろ。せめて送らせろ。これは麗奈が恋人とか恋人じゃないとか関係ない」 と、いきなり怒られ、麗奈は気まずくて目を逸らせた。大急ぎで追いかけてきたのだろう。寝ぐせだらけで、普段コンタクトなのにメガネだった。服もタンスの上から適当に取ったようにチグハグである。 「それに、俺もお前の部屋に色々私物置いてるからな。鍵も返さないといけないし」  チャリンと振って見せたのは、笹かまをかぶったご当地キティちゃんストラップがついた鍵である。去年宮城で買ったものだ。 「私物、持って帰ったほうがいい? 鍵返したほうがいい?」  コクンとうなずいた。今更引っ込みがつかない。 「俺と一緒にいたいんじゃないの? 本心では」 「そんなことない」 「嘘つくな」 「うるさい、出てって」 「出ていかない。俺と一緒にいたかったと目を腫らしてくれる大切な人を置いていけるか。事情があるんだろ、話してみろ」  ベッドに腰かけ、完全に話を聞くモードになった哲哉を前に、麗奈はやっと病気の件を相談するタイミングを取り戻した――。  この一年抱え込んでいたことを全部吐き出した。哲哉はただただ聞いてくれた。そっか、辛かったねと受け止めてくれた。
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