12人が本棚に入れています
本棚に追加
***
結果的に言えば、告白はされなかった。
晴天の昼休み、校舎裏の楠の木陰にひっそりとあるベンチで、購買で買ったパンを食べながらその後の出来事を陽次郎に話した。
焼きそばパンを食べながら聞いていた陽次郎は、パックのレモンティーを口に含んでふむと頷いた。
「つまり、佐藤くんの元カノが今俺のお友達にいて、俺と仲良しの月子に元鞘に収まりたいから何とかしてと頼んできたと」
「いや、女の面では素行が良くない陽次郎の毒牙から救いたいってことらしい」
「それを結局引き受けちゃうとこが月子だな」
「だって見ず知らずの先輩に声かけるってよっぽどじゃん?陽次郎にこの話を伝えるくらいの事はできるし」
「お人好し」
私の頬を陽次郎が人差し指でついてくる。
つんつんなんて可愛いものではなく、ぐりぐりと強めにつつかれ割と痛い。
おせっかい、貧乏くじ等と言いながら、どこか嬉しそうについてくる言動のギャップがすごい。
「良い人すぎ。だから自分の恋を犠牲にして相手の恋を実らせるんだ」
「だってなんか、頼られたらー」
「ほっとけないもんな。月子は昔から頼ってくるやつに甘い」
やけに真剣な表情でそう言うので、何も言葉が出てこなかった。
怒っているのとは違うが、何かうっすらとした毒を感じる。
名探偵に失言を指摘されて詰んだ犯人みたいな気持ちだ。
「それで?どのこのこと」
「え…ああ」
目を伏せた相手が急に話題を戻した事に戸惑う。
(なんだったんだろ)
私はスマホを手にし、佐藤君が半ば強引に連絡先を交換してきた際、送ってよこした彼女の写真を見せた。
最初のコメントを投稿しよう!