第1章 プロローグ

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今日もそうだった。そよそよと風が俺の体に吹き付け、体に浸透していくように溶けていく。 俺はこの風が好きだ。街で吹いてくる風とは違う、自分の体にすっと馴染むようなこの風は、俺を包むように優しく通り過ぎていく。 それがこの神社に来る1番の理由なのかもしれない。本来の理由は、もうここに来る口実のようなものになっている。 「君は、叶えたい願いことはあるかな?」 不意に歩いている〝さっきまでは何もいなかったはず〟 の前方から声がかかった。 今までこの神社に通って来て他の人と会ったことのなかった俺は、まさか声をかけられるとは思っておらず、びっくりし過ぎて尻餅をついた。
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