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「ふーんそれでどうしたんだ」
「もちろん部屋について、すぐヤッた」
玄関ドアを閉めるやいなや、二人むさぼるようにキスをして、そのまま服を脱いだ。
「そうか。性交に成功か。おめでとう」
セイコーにセイコー、セイコーにセイコー。西はちょっとだけ歌うと、布団に潜りこもうとした。それを阻止する。骨の髄まで皆本の強引さを理解していて、主人のいうことをきくしかないと諦観している犬のような顔をしている。
「でもどうなんだろうな。彼氏が欲しいなら即ヤリすんなって前に言ってたよな、西」
西の鼻をフニフニとつまみながら言った。
世間評は、ちょっと昔の言葉を使うなら塩顔の二枚目。性欲などありません、みたいなつるっとした男前が、今はただ無防備に皆本にいじられている。かわいい。
「例外というものは常にある」
西は淡々とした眠い声で言った。喜多との経過はさんざん西に話していたから、西のジャッジは信頼できた。だがしかし。
「うん。まあ最近では珍しい『逸品』だった。あのすれてない感じ、本当に」
「逸品」のダブルミーニングを理解して、西は目を閉じたまま笑った。皆本はつい今しがたまで手の中にあった力強く勃起した素直なものを思う。かっこいい姿だった。
「即ヤリなのにすれてないとは」
「そうなんだ。即ヤリだけどすれてないんだ」
「思うに」
「うん」
「重い」
あ、ごめん、と言って皆本は、西の上からどいた。西の上にぴったりとのっかっていたのを忘れていた。ベッドの上の頭からつま先まで布団に入っている西のカタチがとてもかわいくて、どうしてもその上に乗りたくなってしまったのだ。
真上に細長く身体を重ね、顔をぺちぺちと軽くたたいて起こした。そんなことをしても西は怒らない。
オモウにオモイ、オモウにオモイ、とラップとも言葉遊びともつかない即興を西は歌っている。西の布団をめくって、中に入った。
「なんだよ」
「へへ」
布団の中に充満していた西の眠りの匂いを吸いこむ。それをかぐととても安心する。
「……全体的にどうだった」
「なんかそれもお人柄、って感じで、真面目だった。すごく」
「真面目なセックスか。いいことずくめじゃないか」
真面目なセックス、真面目にセックス~と今度は皆本が歌った。
「真面目なセックスなんてつまらないだけ『だぜ』」
「それは残念、『だぜ』」
「あはは」
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