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「馬鹿を言うな。好きなものを我慢するほうが体に悪いに決まってる。うちにあるものを主人が飲んで何が悪い」
嫁はイライラしました。姑が生きている間はまだ優しい夫だったのが、この頃はやたらと偉ぶるようになった気がします。嫁はつい「偉そうに」と呟いてしまいました。夫は驚きと怒りで眉を吊り上げます。
「なんだその言い方は」
「言い方がなんですか。我慢が体に悪いとおっしゃるなら、私だってもう我慢しませんよ」
嫁は我知らず、切りつけるような眼差しを向けていました。
夫は一瞬怯んで、はっとしました。
「やっぱりそうなのか」
「なんですか。私がこの家の財産を狙ってるって、まだおっしゃるんですか」
「ああそうだ。そのためにおまえ、すず女をいじめているだろう、追い出そうとして」
「何を根拠に。すず女がそんなことを言ったのですか?」
そんなはずがないと呆れつつ問い返した言葉に、夫は深く頷きました。
「おまえのしたことは全部知っている。この間だっておまえ、すず女が勝手に団子を食べたと言って叩いたそうじゃないか」
「なんのことです?」
「とぼけるんじゃない。いくらすず女が、団子はお地蔵様に供えたんだと言っても、おまえが食べたんだ、この悪い口め、と、泣いて謝るまで追い回しただろう」
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