裏切りすずめ

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嫁は思わず黙り込みました。そんなことはしていません。それよりもその内容にめまいがしました。団子を作ったのは嫁とすず女しか知らないことで、夫にそれを話したのはすず女以外にいないからです。 夫は続けざまに、過去に嫁がしたという悪事を次々に暴露しました。すず女への嫌がらせ、暴言、暴力の他に、すず女の縁談相手に色目を使った、というのもありました。 嫁はもちろん否定しましたが、夫に通じる様子はありません。度重なるすず女の告げ口によって、すっかりそう信じ込んでいるのです。 「だったらなんでもっと早く、そのときに言ってくれなかったんですか」 「すず女に止められたんだ。女同士の問題だから、口出しをされると余計にややこしくなる、自分たちで解決するから大丈夫だと。だけどおまえの悪行はひどくなる一方じゃないか」 「その話を本当だと思っていたのなら、どうして私とあの子を二人だけにして、自分は家を空けられるんですか」 「おまえたちがそんなだから、居心地が悪かったんだよ」 嫁は呆れて、がっかりして、馬鹿馬鹿しくなって、誤解を正す気にもなれませんでした。 嫁は、隠れてこそこそ笑っていたすず女を引っ掴むと、一発ぶん殴って家を出ました。     
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