裏切りすずめ

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このように息子は、嫁と母親の両方を気遣っていました。しかし嫁は不満を持っていました。嫁は説得されて自分の子どもを持つことを諦めたのに、息子は自分の娘をかわいがっているのです。 娘は前妻の実家で暮らしていました。前妻の実家は「すずめのお宿」という老舗の旅館で、なかなかに繁盛しているとの評判でした。 母親はそれまで、逆らったことのない嫁を気に入っていました。料理を教えてあげたり、自分のお古の着物をあげたりと、何かとかわいがってきました。 ところが、嫁には後継ぎを産む気がないらしいのです。これは失敗した、騙された、と思うようになりました。嫁は最初から財産目当てで、自分の取り分を減らさないために子どもを産まなかったのでしょう。そして今はきっと、母親が死ぬのを待っているのでしょう。 母親は息子に嫁を追い出すよう迫りました。このままでは家を乗っ取られてしまいます。 反対に、息子と嫁は母親を宥めました。「そんなつもりはありません」と嫁は言い、息子は「母さんは年を取って考え方が僻みっぽくなった」と言いました。 母親は、息子が嫁に騙されていると思い込み、決して説得はされませんでした。いっぽうで息子は、嫁の善良さを知っていましたから、懸命に庇いました。     
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