裏切りすずめ

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数日後のことです。息子は突然、前妻の子を家に連れて帰ってきました。驚く嫁と母親に、今日からこの子はうちの子だ、この子に婿を取らせて後継ぎにする、と宣言しました。 前妻の子は十四歳のかわいらしい娘に成長していました。名をすず()と言います。 母親はしばらく考えて、それはいいと賛成しました。女の子でも自分たちと血のつながった子です。改めて見てみれば、器量も頭もよさそうではありませんか。今からでも面倒を見てあげれば、いずれ恩を返してくれるでしょう。 姑が賛成したのを見て、嫁は目の前が真っ暗になりました。これでは私の立場がない、あんまりだと息子に訴えましたが、息子は嫁を宥めて「突然のことですまない。でも一緒に暮らしていれば情も湧くから、仲よくしてほしい」と頼みました。息子はこれで、嫁が母親から「後継ぎを産め」と責められることもなくなり、先妻と娘にも償いができて、万事うまくいくと考えたのです。 嫁は、あまり不満をもらせば追い出されると思って黙りました。もう子どもを授かれない歳になっては再婚もできず、親きょうだいに面倒をかけるだけです。黙った嫁を見て息子は、物わかりのいい女だと喜びました。 息子はすず女をかわいがって、ほしがるものは何でも与えました。美味しいと評判のものを遠くから取り寄せたりもしました。嫁のためにそんなことはしたことがありません。母親から、嫁を甘やかしてはいけないときつく言われていたからです。     
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