裏切りすずめ

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悔しく思い、嫁は姑に告げ口をしました。しかし姑は取り合いませんでした。財産を嫁が使うのは面白くないけれど、孫が使う分には、多少はかまわないと思ったからです。ただ、嫁が不満に思うのもわからなくはないので、自分が持っている着物を何枚かあげました。それらは誂えた当時は高かったのです。今ではすっかり古びていますけれども。 裕福な祖父母のもとで何不自由なく育てられたすず女は、快活で天真爛漫な少女でした。客商売の母親を手伝ってもいたので、気遣いがうまく社交的で、笑顔を絶やしません。家庭内は途端に明るくなりました。 嫁は内心、不愉快に感じていました。それでもすず女は本当にいい子でしたし、子どもに罪はないからと、波風立てるのを避けて仲よく振舞っていました。 二年ほどが経ったある日、高齢になっていた母親が、体調を崩しました。そのまま数日寝込んだかと思うと、あっけなく亡くなりました。嫁は心のなかで神仏に感謝しました。 その頃、すず女には縁談が持ち上がっていました。すず女は旅館を経営する祖父母のもとで育ったため、もともと料理や掃除は得意でしたが、花嫁修業として嫁も彼女に家事を教えていました。 ある晩、夫は嫁に言いました。 「おまえ、少し、すず女に厳しくないか」 そう指摘されるほど、夫は嫁がすることなど見てはいません。嫁は驚いて、なぜそう思うのか聞きました。 「いや、何、たまたま見かけたのさ。おまえは手慣れた主婦だが、あの子はまだ子どもだ。そのつもりはなくても、できないことを押し付けている場合だってあるだろう」     
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