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男は河原で黙々と石を拾い続けていた。いつから拾い始めているのか誰も知らない。子供たちからは石おじさんと馬鹿にされている。興味を持ったローカルテレビが取材に来たりもした。しかし何を聞かれても彼は「拾いたいから」としか答えない。やがて人々は彼のことを気にしなくなった。それでも彼は来る日も来る日も石を拾い続け、大袋が石でいっぱいになるとどこかへ持って行き、またやって来ては石を拾い続けるのだった。
今日も彼は河原で黙々と石を拾っている。人々はもう彼のことを全く気にせず夕方になると家に帰って行った。河原にはもう彼しかいない。
「ふうやれやれやっと一人になったか。」
彼は注意深く周りを確認してからブルブルと身震いして元の姿に戻る。彼の姿は銀色で目が大きく皮膚はツルツルとしていた。そう彼は宇宙人なのだ。
「それにしてものんびりとした星の住人だよな。俺がこの星の質量を着々と奪っていることに気付きもしない。気づいた時にはこの星も廃星になってるな。ふうやれやれ。」
彼はため息を吐きながら茂みをかき分けた。そこには母星に繋がるワープホールがある。そこに石の詰まった大袋を放り込むと代わりに空の大袋が帰ってくる。彼は再び黙々と石を拾い始めた。
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