0人が本棚に入れています
本棚に追加
「一つ、プランがあります。」…
犠隻 争侍(ぎせき そうじ)は町の警備員だ。デパートや施設の日中警備、夜勤業務が
主な仕事先。本日は夜勤明け。お昼時のみの混雑の大型スーパーのフードコートで
混雑前の朝の時間、ビールと簡単なつまみを食べて帰路につく予定。
朝に飲む酒の一杯、これに限る。至上の瞬間…たまらねぇ…いや、たまらなくねぇ。
たまらなく嫌だ。争侍は“暴れるのが大好き”である。
暴力、殺人、戦争、ありとあらゆる非道行為に参加してきた。
ケタが外れる残虐行為を渇望し、そこに浸かる事を“生きがい”としてきた。
殺した人間の数は、両手を10回数えても、数え切れない。
しかし、争侍がこうやって“一応見た感じは平和”の“日本”で、ノンビリと過ごせるのは、
昨今出張ってきた“悪”のように世界征服とか、組織、軍団を作る、大金を稼ぐといった、要するに“デカい事”に興味がなかったからだ。
漫画みたいにありえない力を持つ連中が、世の中に出張り初めた事を機に、争侍は
“引退”した。新しい時代、平和な世界の到来を、彼なりに迎えた感じではある。
しかし世界は…
「ちっとも良くなってねぇじゃねえか?」
連日、持ってる携帯やテレビに流れるニュースは“戦いと争い”ばかり。
正義の味方が溢れかえり、それに付随する悪も大挙の一途。自分が暴れ回っていた頃と
変わらない。それどころか、余計にひどくなっている。
結局、正義なんてもんの完遂は、まだまだ来ないらしい。予想はついていたし、
どうでもいい話だ。争侍としては、自分の本領を発揮できる場所から“帰ってこいコール”が聞こえているだけでいい。大事なのはそこだ。闘争の歓喜が蘇ってくる。
仕事期間は半年。良い休暇だったな。口を歪ませ、一気にコップを煽った。
瓶ビールのガラスに見覚えのあるスーツ姿が映る。
(あの男が来たか…)
争侍はニヤリと唇を歪ませた…
最初のコメントを投稿しよう!