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「やめましょう、Mr.カルロ、そんな事はしてはいけない。」
自分をこの国へ逃がしてくれた男が悲しそうに喋りかけてくる。カルロ・メスメンデスは
口に突っ込んだ銃口と彼の顔を少し見比べ、引き金に添えた指に力を込めた。
もっと早くにこうすべきだったと思う。2週間悩み、拳銃による自殺が
自分に一番ふさわしいと決め、この国で、それを持っているのは警察か、暴力団関係と
気づき、前者は国を守る存在だと考え、後者の事務所を探す事3日…
ようやく見つけた彼等から強引に
(最も、この国でカルロに敵う者は数える程しかいないだろう)
旧式のトカレフを奪い、自室で咥えている時に男の来訪があったという訳だ。
「カルロ、貴方は正しい事をした。その結果、あの国は救われた。ニュースでも
見るでしょう?子供達はお腹一杯、暮らす人々全てに笑顔が見えています。そして、その力が再び必要です。」
確かに平和だ。我が故郷は…それが、自殺を遅らせた原因でもある。だが、
(全員じゃない。全員は救えなかった)
カルロは“完璧主義者”だ。若い頃から反政府活動に身を投じ、戦い続けてきた。
どんな願いでも必ず叶える事ができる。そこに伴う努力と事を成す事を信じ、
諦めず、前に進み続ける事が大事であり、自身の信念として戦ってきた。
それを信じ、現に彼等は圧政者を打ち破り、
平和な政権を発足するまでに至る。
だが、人は権力を手にすれば、理想を忘れ、自己の利欲に走るのが常。
カルロの仲間達もそうだった。自らが倒した政権と大差ない独裁を進める彼等に
政職をとっくに退いたカルロは、独裁に喘ぐ民衆のため、再びの戦いを挑む。
時代は異能の存在や能力者達が跋扈する時を迎えていた。彼の前にも、
政府側につく“それ等”が立ちはだかる事もあったが、
固い決意と信念を持つカルロの敵ではなかった。
やがて、終戦の決め手となる最後の戦闘で、それは起こる。政府庁舎に突入したカルロ達にほとんどの兵士は降伏した。しかし、現大統領である、カルロのかつての友は、
最後まで抵抗した。
手向けの意味を込めて放った銃弾は、彼の心臓を一撃で捉え、苦しませる事なく、あの世に送る。
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