即興即戦 バッド エンド バトラーズ

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「正義は難しいな…戦友」 苦笑いのように呟き、死んだ友の顔は今でも脳裏に焼き付いている。問題はその後だ。 庁舎を解放し、外に出たカルロは驚愕に目を開く。 降伏した兵士達と、その家族が広場に集められ、味方によって処刑されていた。 あれほど投降したモノを撃つなと“自分が命じていた”のにも関わらずだ。 同国人同士の殺し合い、大国の利益によって動かされる属国、そんな情政を変えるために、 自分は戦ってきた。その結果が、これか?我々は結局、何にも変わっていないのか… 呆然とする彼の前に、銃撃を逃れた女性が走ってくる。こちらに伸ばした手は 生まれたばかりの赤子が乗っていた。思わず手を出し、受け取ろうとする彼の前で、 女性の頭が銃弾で砕けた。発射された5.54ミリの高速弾は勢い止まらず、 彼女の頭上近くまで掲げられていた手を貫通し、赤子の産着を赤く染めていく。 頬に飛び散る鮮血が“痛い”と感じたのは、初めてだった。銃を下げた部下が すぐさま駆け寄り、慌てたように、敬礼をする。 「も、申し訳ありません、閣下。う、撃ち漏らしがあり、銃を向けてしまい、 あ、あのお怪我は?」 「何故、撃った?」 「ハッ?」 「降伏した政府関係者を殺す命令は出していない。ましてや、女子供を…」 「ああっ…」 “そんな事か”と言った感じの部下の表情は忘れない… 彼が喋る理由(カルロ以外の上官達は新政権を立ち上げる上での犠牲、生贄が必要云々)は どうでも良かった。 自分は正しい事をしたと思っていた。しかし、それは仲間達にとっては“まやかしの正義”、 “甘ちゃんの考え”と受け止められていたようだ。いや、かつての仲間達も これまでの戦いもそうだったのかもしれない。ただ自分は気づかなった、知らなかっただけで… 正義は死んだ…いや、元からそんなモノはなかったのだ。ならば、最後に 自分のやるべき事を果たそう。 カルロは、なおも喋る兵士にゆっくり返礼を返した後、彼も含めた味方全てを殺し、 そのまま命令を出した上官、新政府関係者を軒並み殺した後、日本へと逃れた…  
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