#プロローグ

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#プロローグ

 ちくちくするなあ。頭に被った昔ながらの麦わら帽子は、おでこと耳のところに藁がちょびっと飛び出していて、小学3年生の子供の柔らかな皮ふをちくちくと刺す。  暑いなあ。小さな細っこいからだをだぶだぶのティーシャツと短パンに包み、背中には小さなリュックという身軽な服装。でもセミの声が鳴り止まない長い山道を歩いていたら、おでこや首筋はあっという間に大洪水になっている。何より背中のリュックが濡れた背中に張り付いて気持ちが悪い。でもノドはカラカラだ。口の中が乾いてヒリヒリする。  足も痛いなあ。どれくらい歩いてきたのだろう。山道をバスで登った後、足で山に登るなんて。普段履きの運動靴だけど、山道は前後左右に傾いているし、石や岩や木の根が地面に顔を出していて、足の裏が熱くて痛くなってきた。僕は立ち止まって、後ろを歩く『じいじ』を振り返った。 「どうした?ノドでも乾いたか?」     
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