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じいじは額に汗をにじませているけれども、息は乱れていない。ちょっと休めるならなんでもいい。僕は首を縦に二回振った。じいじは首に掛けた白いタオルで額を拭うと、あたりの道を見回した。細い山道は林中の斜面の途中で座って休めるところはない。少し考えてから口を開いた。
「もう少し歩くと、梅の木…じゃなくて、レモンの木があるんだ。レモンは知ってるな?じいじがレモネードを作ってやっただろう?黄色くて酸っぱいあのレモンだ。そこでひと休みしよう。レモンがなってたら、じいじが絞ってやる。きっと酸っぱいぞ。」
じゅわ。口の中がレモンの絞り汁の酸っぱいのを思い出してつばが溢れた。じいじの作ってくれたレモネードはほっぺたがキリキリするくらい酸っぱかった。身体も酸っぱいのを思い出して反応したのか、キュウってなってゴクリとつばを飲み込んでしまう。
「じいじ、やめてよ。キュウってなっちゃう。」
口からつばが溢れていないかと、手で口元をグイッと拭う。うん、大丈夫。ヨダレは垂れてない。じいじはその様子を見ると、満足そうに笑った。
「さあ、行こう。座れるところで水分補給だ。そら、行った行った。」
あれ?レモンの木じゃないの?僕は少し訝しげにじいじを見たけど、じいじは早く行けと手を振るばかりだった。ノドの渇きが気にならなくなった僕はちょっと元気になってまた歩き始めた。
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