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場がシンとした。
仲の良くない兄弟にとっては珍しい事じゃない。
「あんたが言いたいこと、私にはなんとなく分かるけど――」
訳知り顔で真っ先に口を開いたのは貴恵だった。
「分かる?どんな風に?」
「そのせいであんたたちが問題の真っ只中にいるってこと!」
そもそも僕のトラブルは
お腹の子にとって一番の栄養なんだ。
貴恵は腹の底から嬉しそうに笑い出した。
「もう結構。忘れて下さい」
「冗談よ。あんたを心配してるの」
今さら――。
「お腹に詰まってるのは赤ん坊ではなく腹黒い悪魔では?」
「聞きなさい。征司の弱いところでしょ?私知ってるわよ」
貴恵が嬉々として声を上げた
その時だった。
「おい」
薫が眉を顰めて静かにドアの方を指し示した。
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