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僕の唇を潤すライムジュースを舐めとるように
王子様は朝からセクシーなキスを落とす。
伏せた睫毛の奥で
いつも分別のある瞳が
この時とばかりは少年のように物欲しげに揺らいだ。
「夕べ――君が僕を求めてくれて嬉しかった」
「九条さん……」
やがて九条さんは切なげな声でポツリと呟く。
「僕はてっきり彼を追って行ってしまうと思ってたから」
夕べ――。
「あ……」
セラピー会場から姿を消したお兄様。
「あなたといたかったんだ。嘘じゃないよ」
「嘘だなんて言ってないでしょ」
「ああ……うん」
嘘じゃない。
嘘じゃないけどでも。
「分かってる。君の意思じゃどうにもならない事」
九条さんが暗に指摘する通り
あれから僕はずっと――気持ちは誰かさんの後を追っていた。
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