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準備に手間取りはしなかった。
「左の手も繋ぐよ――」
お遊びの道具は揃っていたし
この部屋でいつも僕がやられていたことだ。
「きつくない?」
「気にするな」
天井から下がった鎖の手枷に繋がれた王様は
さながら自ずから罠にかかった獣。
首筋は長く鎖骨は深い。
肩から腕にかけて
緻密に計算されたかのように鍛えられた筋肉は
いつ見ても惚れ惚れするほど美しい。
「見ているだけか?」
首を傾ぐと長い前髪が目元に翳を作り
官能的な唇が物憂げに開いた。
「こんな姿のお兄様……初めてだから……」
初めてだ。
いつも僕が後追いしていた
意地悪な気まぐれが――。
今は完全に僕に繋がれている。
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