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まるで贖罪だと――。
兄の背中を打ちながら僕は思い至った。
許し。
償い。
そして罪と苦しみからの解放。
征司は原罪を裁くと言った。
己の身を犠牲にしあらゆる罪を浄化するつもりか。
いや、本当はそんなの詭弁だ。
僕らは堕落している。
卑しく快楽を追求し
互いを弄び酔いしれているだけだ。
ならばなぜだろう。
なぜこれほどまでに堕落する姿が美しいのか――。
「ウッ……」
力の加減を失い
一撃が皮膚を破ったその一瞬。
兄の背中を伝う一筋の赤い血に
僕は愕然としてむせび泣いた。
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