episode232 SとMの交錯

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まるで贖罪だと――。 兄の背中を打ちながら僕は思い至った。 許し。 償い。 そして罪と苦しみからの解放。 征司は原罪を裁くと言った。 己の身を犠牲にしあらゆる罪を浄化するつもりか。 いや、本当はそんなの詭弁だ。 僕らは堕落している。 卑しく快楽を追求し 互いを弄び酔いしれているだけだ。 ならばなぜだろう。 なぜこれほどまでに堕落する姿が美しいのか――。 「ウッ……」 力の加減を失い 一撃が皮膚を破ったその一瞬。 兄の背中を伝う一筋の赤い血に 僕は愕然としてむせび泣いた。
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