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実に背徳的な行為の中にあって
僕はこの人の聖性に触れた気がした。
「お兄様……許しを請うて……」
堪らずその背中に抱きつき
傷口に唇を寄せる。
「許しを請う?誰にだ?おまえにか?」
征司の血はほのかに甘い。
まさに愛すべき神のワインだ。
「いいえ。この際相手は重要じゃないと思う」
僕はもっともらしく首を横に振った。
「神様でも悪魔でも構わないの。ようはあなたの魂が――あなた自身を許せればそれで」
「俺自身が俺を……?」
征司の身体はしっとりと汗ばんで
虚ろな瞳には小さな子供のような光が浮かんでいる。
「正直、こうなって僕がどれほど嬉しいか――誰にも理解はできないでしょうね」
僕は独り言のように呟いた。
「あなたの方が僕に依存してる……僕よりももっとあなたの方が僕に執着して離れられないでいるなんて」
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