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「目が覚めたよ、和樹――」
尖った肩甲骨を寄せて
自分の背中を鏡に映し
「それにしても随分派手にやってくれたじゃないか」
征司は呆れたように頭を振る。
「一体……」
狐につままれたような気分だった。
いや狼か――。
「九条敬に仕返ししないとな。あんな変なセミナーに俺を連れて行きやがって」
完全に開眼した王様は
眼光も鋭く僕に向き直る。
「だけどその前に――」
「ンッ……!」
征司は当然のように僕の手首を掴み上げ
先刻まで己を繋いでいた鎖を巻きつけた。
「お兄様と遊ぼうか?和樹――」
僕はなす術もなくあんぐりして
さんざん兄を打ち付けた馬上鞭を取り落とす。
「い、いやぁっ……!」
そして立場が逆転した。
いや、逆転じゃないか。
僕らが元いた世界に戻っただけだ――。
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