episode232 SとMの交錯

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そこなんだ――。 そんなことまで言われたら けしてこの人を裏切れないと思うのが人の常だ。 しかし稀有な浮気者にとっては それはありがたい言葉であると同時に 『やっぱり僕は何をしても許されるんだ――』 ストレートに 許可の言葉として受け取れるわけだ。 「ねえ、もう一度抱いて」 そんな自分のズルさをごまかすように 僕は愛する人にすがりついた。 「今かい?」 「今じゃダメ?」 九条さんは腕時計に目を走らせたけれど。 答えは既に決まっていた。 「知ってるだろ?君の誘惑に勝てるものなんて何もないって」 「なら来て」 九条さんは僕の手が導くまま ベッドに上がってきて裸の僕を抱きすくめた。
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