episode232 SとMの交錯

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膨らんだ切り札を撫でながら 貴恵は小馬鹿にしたように僕を一瞥する。 「いいですよ――そこまで言うなら。僕だってそんなに暇じゃありませんから」 そうだ。 僕が屋敷に戻ってきた名目は他でもない――。 「でもその前にお二人に聞きたいことがあります」 「何よ改まって?」 「征司お兄様の事です」 その名を口にするだけで 僕の心は条件反射のようにざわつきひどく緊張した。 「征司兄の?そんなのおまえが一番詳しいんじゃないのか」 薫は仕方なく手近の椅子に腰を下ろすと 薄い唇を皮肉な形に吊り上げる。 「征司の事?」 一方ゴシップ好きのお姉様の方は 何かを感じ取ったのか。 「いいわ。話してみなさいよ。私たち兄弟じゃない」 手の平を返したように 急にやさしい声色で僕の方に向き直った。
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