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一緒に観たくないのか、それとも観せたくないのか。椿は真面目な顔で、気まずそうに立っている庸介を見上げた。
「何か都合が悪いのですか?」
「え?」
「この間だって、遅くなるって嘘ついたじゃないですか」
「う、嘘って……そんな」
「魂胆ってなんですか?」
「え?」
「斉木さんの言っていた魂胆ってなんですか?」
いきなりの直球な質問責めに庸介はたじろいだ。椿は真剣だ。ここではぐらかせば、また私のことなんて、となることは目に見えている。『浮気でもしているんじゃないの!』なんて、感情を爆発させてくれたらこっちも本音を言いやすいんだと、思わずため息が出そうになる。
だからそうじゃないんだと、さらにため息が出そうで庸介は頭を掻いた。そもそも、椿が感情任せで怒るわけがないのだ。
自分が恥ずかしいから言いたくないとか観てほしくないとか、自己保身に走るから椿を不安にさせていることにようやく気付いた庸介は、少し呆れたような笑いを浮かべて隣に座った。
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