庸介の夢 9

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 椿は自分のことをどちらかというと思慮深く慎重な人間だと思っていた。 「私は……余程、庸介さんが好きなようです」 「……!」  突然の告白に庸介の胸がドキンと大きく鳴った。 「私は慎重で警戒心も強い方だと思います。でも、庸介さんには初めから違いました。それは、今もです。庸介さんに関しては平静でいられません。小さなことが心の中をかき乱して、今までに見たことのない自分が出てきます」  椿は庸介の包帯の巻かれた手を包むように握った。 「私は井桁簾楊に嫉妬をしていました」 「え? 井桁簾楊?」 「井桁簾楊は優しかったあやめさんとベトナムで親切にしてくれた庸介さんを私から奪ったと、そんな気持ちがどこかにありました」
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