PART 1 * ストーカー椿は、ベトナムへ飛ぶ

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PART 1 * ストーカー椿は、ベトナムへ飛ぶ

 椿は空港にいる。  英語も喋れなければ、ベトナム語なんて全くちんぷんかんぷんだ。それなのに、手にはベトナムのホーチミン空港行きのチケットが握られている。  スマートフォンで、ホーチミンの知識は手に入れた。  ぼったくりとか、怖い事もいろいろあるらしいと知り、怖くなった。本当は、足が震えるくらいに椿は怯えている。  椿にとって初めての飛行機、もちろん初めての海外旅行だ。  自分の意見を言う事をしない椿が、強い意志を持ってこの一人旅を決行したのには、もちろん理由がある。  会いたい人がいるのだ。  その人に会える確率は……たぶん数パーセント。  それでも、滞在期間中ホーチミンを歩き回って探すつもりでいた。とにかく会いたい。そして、もしも会えたなら。  処女をもらってください。  そうお願いするつもりでいる。土下座でもなんでもして、お願いするつもりだ。 プライドなんていらない。  とにかく、その人を見つけて処女をもらってもらう。  その目的を達成するため、ひとしずくもない勇気を奮い立たせて、空港に立っていた。
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