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椿は総務部総務課にある受付に所属していた。
この会社の受付はキレイどころが多いと取引先に評判だ。なぜ、椿が総務課なのか……椿の人生の中でそれは最大級の謎だった。
それはさしずめ、白鳥の群れに放たれたガチョウのようだと、椿は思っていた。
仕事は早い。数学が得意で、数字の把握は早かった。だからだと、無理やり自分を納得させて毎日働いていた。
椿には密かなあだ名があった。陰でみんなが自分を何と呼んでいるか、椿は知っている。
つまきちゃん。
つまらないつばきちゃん。だから、つまきちゃん。
椿にとって、人と話すことは苦痛以外のなにものでもない。仕事としてはこなせる。受付業務に支障が出ることはなかった。
ただ、ひとたび仕事を離れプライベートとなると、人の心情を想像してしまい、それ以上話すことが出来なかった。
ああ、この人は怒っているかもしれない。さっき言ったあの言葉が悪かったのか…。
考え過ぎだとは分かっていても、もうそからは、言葉が出ることはなかった。
話していても続かない。飲み会で隣につまきちゃんが座ると退屈だ。
そんな声が聞こえるようで、会社の飲み会からも足は遠退いた。
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