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「……あれ?」
飛行機の到着は予定より20分ほど遅れた。おかげでその分長く寝れたから良かったけど、迎えに来た兄貴はなぜか不思議そうな顔をしている。
「れ、玲ちゃんは?」
一言目にそれか。
いや、おかえりとかそういうのいらないけど、明らかに玲も一緒だと思いこんでいたことがバレバレで。
「……玲は仕事。今菓子メーカーはどこも忙しいんだ」
来週バレンタインを迎えるこの時期はとても忙しい。3月末までシュクレ担当だった話も伸びに伸びてシュクレ決算の7末までとなった。この分だとまた何かしら伸びそうだと思うけど、玲は楽しそうだから口出しはしない。
「でもコンサルタントって、」
「応援。どこも人足りないから」
そういう体で会場に乗り込んでいるが、実際は市場調査だ。客層や混み合う時間、人気メニューの傾向を実際に現場で見たいらしく店頭に潜り込むと意気込んでいた。
『邪魔しないように気をつける!』
そう言って楽しそうに笑って。
ここ最近は夏の新商品の戦略会議もあるらしく、てんやわんや状態。
自分より仕事をしている玲を見て俺は正直面白くない。
「一緒に来て欲しいって言わんかったんか?」
「俺が結婚式に行ってる間、玲は?実家は居辛いだろ」
玲のことだから言えば付いて来てくれただろう。
だけど、正式に付き合ってまだ一ヶ月半。
いくら兄貴とは一度会っているとは言え、兄嫁との時間はできればまだ作りたくない。
芽衣子も玲もうまくやる方だと思うし、二人ともさっぱりした性格だからウマが合いそうだけど、会わせるにはまだ早い、というのが俺の判断だった。
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