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「足元気をつけて。段差あるから」
クリーム色の壁にダークブラウンの瓦屋根。
目の前に聳え立つ二階建ての一軒家は、梓の実家。
二年前にリフォームされたらしく、この周辺の住宅の中でも一際目立つ外観。庭には、バスケットゴールとブランコ。砂場もあり、とても広い敷地だと見惚れていた。
石段を二段上り、梓が玄関を開ける。その音を聞きつけて晃さんが出迎えてくれた。
「玲ちゃん、いらっしゃい」
「こんにちは。お邪魔します」
「梓、お帰り。朝帰りとかラブラブか」
「あぁ」
ニヤニヤとする晃さんの言葉に梓は表情を崩さずにサラッと流す。晃さんはどこかつまらなさそうに唇を尖らせた。
こうやって二人を並べて見ると改めて兄弟だな、と思う。
照れたところとか。笑い方とか。やっぱり似てるなあって。
「梓、お帰り!待ってたんよ」
黄色いエプロンを着けたボブヘアーの女性がリビングで出迎えてくれた。きっとこの人が晃さんの奥様だ。
「あ、玲。これ兄嫁の芽衣子」
「これって言わんとよ」
ぷん、と怒るそぶりをする芽衣子さん。そんな芽衣子さんを見て晃さんはくすくす笑う。
「梓、ちゃんと紹介してくれる?」
芽衣子さんに促され、梓は私の隣に立つ。そっと腰に手を回し、柔らかい眼差しで私を見つめた後、その視線をそのまま二人に投げかけた。
「彼女は宮内玲さん。俺の恋人で婚約者」
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