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「無茶するね」
「……うるさい」
この中に、芹がいることは間違いない。もし芹の身に取り返しのつかないことが起きてしまったら、そう思うと気が気でなかった。
「網を、壊してみる」
羽賀はそう言うと扉に手をかざし、雪の結晶を作り始めた。雪が張りついたところの、火が消える。火が現れる前に、また雪を送る。そうすると、小さいながらも完全に火の消えた箇所が生まれ、網に綻びができていく。確実な方法だが、どうしても時間はかかる。
「あと、どれくらいかかる」
「分からない。十分か、あるいはもう少し」
柊は自分の無力さに唇を噛み締めた。異変に気付いたとき、すぐに茅萱に連絡を取るべきだったかもしれない。雷獣の茅萱なら、火の結界を破ることも難しくはなかっただろうに──
羽賀を信じて待つしかないこの状況が、柊にはもどかしくて仕方がなかった。
「……あ」
制服のポケットの中で、携帯が震えている。柊はすぐさま取り出し、通話に切り替えた。
「茅萱!?」
「柊様、蛍です」
ちょうど茅萱のことを考えていたので、茅萱かと思ってしまった。柊は自分を落ち着かせるために一度深く息を吐き出した。
「……すまない。どうした?」
「槐様、茅萱様と連絡が着きまして、そちらに向かっていただくことになりました。既にお戻りになる途中でしたので、さほど時間はかからずに到着なさるかと」
「そうか」
「詳しい場所の確認で柊様の携帯電話にご連絡が行くかもしれませんので、よろしくお願いいたします」
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