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熱い。熱くて、苦しい。
身体の奥の方から、次々と熱が生まれてくるような。それでいて、心が冷たく冷えきっていくような。自分が自分でなくなりそうな感覚が、怖くてたまらない。
「──や、いやだ……っ」
「芹!」
汗だくで目を覚ますと、目の前に槐がいた。芹は布団に寝かせられていて、傍らには槐が座っている。彼はあまり表情を変えないので分かりにくいが、芹が目を開けたことに安堵しているように見えた。
「槐……何で……? ここ、は」
「覚えてないか? 校内であやかしに接触したことを」
「あ……っ」
思い出した。司書の大槻があやかしだったこと。芹のことを襲おうとしたこと。そこに、槐が来てくれたこと。
「覚えてます。その、大槻先生は……」
「今は木蓮のところに託してある」
「そう、ですか」
「今のところ、消すことまでは考えていない。向こうの出方次第だが、今後芹に近付かないことを条件に解放するつもりでいる」
「槐……」
「俺としては、消滅させた方が楽でいいが。芹は、それを望んではいないのだろう?」
「はい……すみません」
大槻には、ひどいことをされたと思う。しかし、そうでない時間の方が長かった。今回のことも、芹が「見える」人間だと知って暴走しただけで、あれが彼の本性だとは芹にはどうしても思えない。否、思いたくない、だけかもしれないが。
「もし向こうの反発が強いようなら、そうも言っていられないがな。状況に応じて処理する」
「分かりました」
槐が芹の思いを汲んでくれたことが嬉しくて、芹は笑みを溢した。
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