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「それより、身体の調子はどうだ」
「えっと、何か、熱くて……」
熱を確かめるように槐が芹の手に触れた瞬間、電流が走ったように身体が痺れた。その痺れがどういう種類のものか、芹は既に知ってしまっている。はあ、と口をついて出た吐息は、自分のものとは思えないほど甘い。
「力を、使われたのだろう?」
槐が優しく芹に問いかける。
「ち、から……」
「身体が反応しやすくなっている。この状態で、よく耐えたな」
「僕、は」
あのとき芹はほとんど抵抗できなかった。身体をたくさん触られて、もう少しで槐以外の男に抱かれるところだった。
──他のあやかしに抱かれて君がどう感じるか、そして、この印を付けたあやかしが犯された君を見てどう思うか……
大槻に言われたことが、頭をよぎる。最後まで抱かれはしなかったが、他の男に触れられたということに違いはない。
「ごめんなさい、槐。ごめんなさい……」
「何を謝る?」
「僕の、不注意で……。僕は槐のものだと、約束、したのに。他のひとに、触らせて、ごめんなさい」
芹は瞳を伏せ、途切れ途切れに言葉を紡いだ。もう要らないと言われたらどうしよう。そう思うと怖くて、槐の目を見ることができない。
知らぬ間に震え出していた芹の肩を、槐は自分の方へと引き寄せた。
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