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さらさらの黒髪に、青みを帯びた灰色の瞳。その色合いは、芹の知るものとは大分異なっていたが、彼が誰なのかということはすぐに分かった。見るものを惹き付ける蠱惑的な美しさは、おそらく槐の血に由来しているのだろう。
「支倉柊です。どうぞよろしくお願いします」
定型文をなぞったような挨拶の後、柊は芹の隣の席に着席した。長いこと休学していた芹の席は教室の最後尾に置かれており、柊の席はごく自然な流れでその隣に用意されたのだった。
「支倉君は、海外での生活が長かったそうだから。久々の日本で困ることもあるかもしれないので、そこはみなさん必要に応じてサポートしてあげてください」
担任の言葉に、何人かが頷く。
「菊地君。復帰したばかりのところ悪いけど、隣の席だし、いろいろ教えてあげて」
「はい」
右隣にいる柊に、芹は初対面の体を装って話しかけた。
「菊地芹です。分からないことがあったら、何でも聞いてください」
今さら自己紹介など、と思ったのだろうか。柊は、口許を緩めて笑った。
「よろしく」
クールな美貌が笑顔に変わった瞬間、周囲が微かにざわついた。こういう表情を無意識で繰り出すから茅萱が心配するのだろうなと、芹はふと年上の友人のことを思った。
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