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今日も僕は世界を作っている。
「冬を迎えた君を埋めよう。
やがて死を蓄えた春が芽吹き、
くるおしい命の夏が来て、
父の愛する枯れる秋がくるのだから」と、
長く連れ添った子どもが僕の世界を華やかに歌う。
あの子の声が舞台の外まで響いて、
誰かのこころを震わせたとき、
僕はほのかに安堵する。
誰かの優しい声が欲しいなんてわがままだけれど、
その声で救われることもある。
今日も僕は世界を作っている。
どれだけ作っても道は見えず、
焦りは募り、恐怖は積み重なって、
僕の世界の邪魔をする。
どれだけ成功していても、
上へ上へ、上へと階段が続いていて、
自分のちっぽけさに足がすくむ。
僕の舞台は薄暗がりに包まれていて、
灯りがなければ歩けもしない。
そんな時、後ろから声が掛かる。
登場人物たちに背を叩かれながら、
時に階段に腰かけて語らいながら、
僕は何度も何度も立ち止まり、
文字のけものの衝動に目を覚まし、また歩き出す。
今日も僕は世界を作っていく。
いつかこのことばの巡礼を終えた時、
何かしらの答えが見つかると信じて。
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