波流目線1

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 観察していると、確かに高梨は、教室の中心からはずれて、静かにしている。あんまりクラスに馴染んでいないみたいに思えて、気になった。なんであんなにさみしそうなんだろう。  昼休み、気づけば教室に高梨の姿はなかった。資料室に行けば、また話せるんじゃないか。  そう思って、行ってみると、やっぱりいて、また“守護天使リク”を読んでいる。 「相当好きなんだなぁ」  俺も、小さいときは好きだった。よく読んだ、大好きな漫画だった。 母さんは元々漫画家で、俺をモデルに、リクという天使のキャラクターを描いた。 正しくは、俺が成長した姿を想像して、リクを描いていた。 毎晩、絵本替わりにその漫画を読み聞かせしてもらった。 「きっと波流が大きくなったら、リクみたいになるよ」とか言って。    それが、呪いみたいに、俺はリクそっくりに成長した。ただし、性格はあんまり似ていない。天使みたいに、いつでも人助けのできる優しいやつになんて、人間の俺がなれるわけがない。  最初は、俺に読み聞かせるためだった“守護天使リク”の漫画が、最近になって話題になって、出版することになり、人気シリーズとして世間にも知られるようになった。     
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