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なんか、嘘っぽい。
「天使だなんて、嘘でしょ」
ずばっと私は言う。いくら私でもそんな嘘にはだまされない。
「本当だよ。ほら、似てるでしょ」
大野くんは自分の顔と、私が持つ漫画本を交互に指さした。確かに、やっぱり大野くんはリクに似ていた。
あとは背中に羽があれば完璧だ。
「じ、じゃあさ、本当に天使って言い張るなら、羽を見せてよ」
「羽ぇ? 見せられない。学校では出せない」
「誰もいないのに?」
「だめ! 万が一、他の生徒に見られてたら大変だろ」
なんとなく、言い含められてしまった。
違う角度からせめてみることにする。
「じゃあ、どうして天使がこの学校に来たの」
「それは……。高梨を守るためだよ。今日から俺は高梨の守護天使になるんだ」
「はぁ?」
転校してきたのは、私の守護天使になるため? 私を守る?
どっきりのつもりなんだろうか。
それとも、この人も、私をからかおうとしてる?
「どうして、私なの」
だまされないから、と睨むと、大野くんは目の前で手を広げた。
「高梨は、ほんとは心がピュアだからさ。子どもみたいに」
言いかけて、大野くんは「だからって高梨が子どもっぽいとかではないけど!」と焦った。
教室の真ん中で、クラスメイトたちと話していたときと違って、大野くんは焦ってばっかりだ。
突拍子のないことばっかり言ってるし。
それがなんだか面白くて、少し気持ちが楽になる。
まぁ、天使っていうのは嘘だろうけど。別にいっかと思えて来る。
「そっか。じゃあ、あんまり追求しないことにしておくね」
そう言うと、明らかに大野くんはほっとした表情になった。
「信じてくれるんだ」
「いや、それは信じないけど」
がくっと大野くんの肩が落ちる。でも顔は笑っていた。
「高梨は、どうしてこの漫画好きなの?」
「これ? これのおかげで、つらいことがあったとき、乗り越えられたんだよね。リクって強くて優しくて、そういうキャラクターを見ていたら、私もがんばろって思えた」
ふうん、と大野くんはつぶやいた。
「大野くんは、“守護天使リク”読んだことあるの?」
「……ない!」
何か、今間があった。
「じゃあ、どうしてリクが自分だなんて言えるの」
「うーん。俺が天使で、それを漫画化されたんだよね」
あまりにふざけた感じだったから、思わず笑ってしまった。
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