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「あ、笑った」
大野くんが、意外そうに指さす。
「え、そんなに私笑ってなかったかなぁ」
まだクスクスしながら聞くと、大野くんは「笑った方が……」と言ったけど、よく聞こえなかった。
「あんま、クラスの中では笑ってないよな」
「うーん。クラスメイトには、影があるとか、怖いとか、大人っぽいとか言われてるみたいだけど。私、本当は、子どもっぽいし、夢見がちなんだよね。子どもっぽい漫画読んで、現実から、逃げてるのかも」
「そんなに現実が嫌なことあるの?」
「ううん。特に何かあるってわけじゃないけど、なんとなく自信が持てないの。さっきみたいに、人から頼まれたことを断ったり、自分の意見を言うことも苦手だし」
「へぇ」
大野くんは少し考え込むように言った。
「じゃあ、俺が高梨が毎日楽しいようにしてやるよ」
「え?」
「俺、そういう人間関係とかは得意だし。それに、俺この学校では部活に入るつもりもないし、ちょっと暇なんだ。だから、高梨の守護天使としてがんばりまっす」
にまっと笑った大野くんは、漫画のリクにそっくりだった。
本当に、背中に羽が生えてるんじゃないかって、確かめたくなるくらいだった。
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