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転校生を迎えての一日がはじまった。
みんな興味しんしんって顔で、ちらちら転校生の方を見る。
転校生はそんな視線にも、嫌な顔ひとつせずに、笑い返していた。隣の子たちとは、もう何か仲良さそうに話している。
授業中、私もみんなのように、転校生をこっそり観察してみた。
改めて見ても、本当に”守護天使リク”にそっくり。
細身の体格も、顔も、羽がないこと以外は全て。
こんなことって、あるんだ。
お昼休憩になったとたん、教室はざわざわしはじめる。
その中でも、一番賑やかなのが、転校生大野くんの席。
この数時間でクラスにあっという間になじんで、すぐに人気者になっている。
最初からこの学校にいる私よりも、みんなと仲良くなっていて、すごいと思うと同時に、まったく違う性格だなと思う。 大野くんは、思ったよりも今時の、なにというかノリのいい男の子らしかった。
クラスの男子とも、すでに冗談を飛ばしあって軽い調子ではなしている。
正直、そういう人はなんだか怖くて、近づきたくない。
天使だなんて、呼び掛けてちゃって、恥ずかしい。
急に、からかわれないか心配になってきた。絶対、子どもっぽいって言われる。
クラスメイトたちにばらされるのも、かんべんしてほしい。
誰にも、知られたくないから漫画も隠してたのに……。
今のところ、大野くんは私の方を見ていない。もしかしたら、資料室にいて「天使」なんて呼び掛けたやつの顔なんて、覚えていないかもしれない。
無理矢理なポジティブシンキングで、一人でうんうんうなずいた。
このまま私の存在に気づきませんようにと祈った。
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