天使イコール転校生

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資料室は、図書室なんかとは違って、授業にときどき使う資料が置いてある部屋。だから生徒は入ってこない。先生だって、ほとんど来ない場所。  ここで大好きな漫画を読むのが私のお気に入りの過ごし方なんだ。  朝は、ホームルームの前に、ぜったいここに立ち寄る。自分に戻って深呼吸するため。  今日みたいに、お昼休みが一人の時にも、ここでちょっとほっとする。  棚の後ろに隠していた漫画を取り出した。 “守護天使リク”。大好きな漫画のはずなのに、その絵を見ても、なんだかいつもほど、ときめかなかった。  だって、あんな風に転校生の男子のこと、間違えて天使だなんて呼んじゃった。もしクラスメイトにばらされたら……。 「こんにちは、天使です」 「きゃああああ」    いつの間にか、目の前に大野くんがいた。  座り込んだ私を、覗き込むように笑っている。 「あ、あのっ」  口をぱくぱくさせていると、「さっきさ、俺のこと、天使って呼んだよね」とばかにするように言った。  やっぱり、聞こえちゃってたんだ……。  私は涙目になりながら首を振った。  大野くんが、私が持ったままの漫画本をちらりと見た。
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