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「守護天使リクか……」
表紙には題名と、天使リクの絵が描かれている。
どうしようどうしよう。恥ずかしすぎる。
絶対、子どもっぽいって思われてるよね。
「へぇ、こんな漫画読んでんだ。もしかして、この漫画のキャラと、俺が似てるって思ったわけ?」
大野くんは、ちょっとむすっとした感じで言う。
天使と間違えたこと、やっぱり、ちょっと怒ってる?
そりゃあそうだよね、勝手に「天使」呼ばわりされたら嫌だよね。漫画のキャラクターと重ねられるなんて、気持ち悪いと思う。
いくら姿形が似てるからって、天使のリクと違って、現実の男子は人に優しくないって、私はよくよく知っている。
だからこそ、からかわれないように、誰にも知られないように隠れながら漫画も読んでいたのに。中学生活終わった……。
「ご、ごめんなさい! 忘れてください!」
逃げるように、資料室を飛び出した。
階段をかけのぼりながら、なんだかみじめな気持ちになってくる。
一人ほこりだらけの部屋で漫画読んでいて、あげくにキャラクターと間違って、天使って呼んじゃって。
すぐにクラスの中心に馴染んだ大野くんにとっては、こんな生徒のこと、不思議でしょうがないんだろうと思う。変なやつって思われただろうな。
ふう、と息をついて、首をふった。
もう、どうでもいいや、どうせこれからも話さない人なんだから。教室では話しかけられないように気をつけよう。クラスの人にだけは、このこと言わないでほしいな。
そう願いながら、そっと教室に戻って次の授業の用意をはじめた。
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